神奈川県南足柄市にある矢倉沢は、箱根ジオパークのジオサイトの一つ。矢倉岳のふもとに広がるこの地域には、のどかな里山風景と人々の暮らしが息づいています。今回は、歩くことでその魅力を五感で味わえる「矢倉沢さんぽコース」をご紹介します。
季節の花々に誘われて
このコースは、四季折々の自然を身近に感じられるのが魅力。お正月明けのロウバイに始まり、春は木蓮や花桃、さまざまな種類の桜が次々と咲き誇ります。夏には民家の庭先をゴテチャが彩り、秋には彼岸花、そして11月には周囲の山々が紅葉に染まります。
花々や木々のささやきに身をゆだね、川のせせらぎや鳥の合唱を聞きながらのんびり歩く――そんな贅沢なひとときが、ここにはあります。

標識
地域に根ざす伝統と交流
道中に立ち寄りたいのが、「道祖神・二十三夜の祠」。この祠は自然素材だけで作られ、どんと焼の日に新築されます。屋根のあるお社は珍しく、地元の人々の手で大切に守られてきたことが伝わってきます。
また、毎年7月7日には公民館の敷地に七夕飾りが設置されます。地域住民がそれぞれ願いごとを書いた短冊が長さ5メートルの竹に飾られ、竹灯籠の灯りに包まれた幻想的な風景が広がります。まさに地域一体となった温かな風景です。
地元産品とふれあい
道中では地元の恵みを活かした直売所や農園にも立ち寄れます。敷地内の農園で収穫された果物や野菜を使って、ジュースやジャム、アイスクリームなどが手作りされており、収穫体験も楽しめます。
また、会太郎自然園では炭焼き小屋やバーベキュー場のほか、釣り堀や清らかな水を利用した施設もあり、自然とのふれあいが日常の一部として息づいています。
矢倉沢の魅力を歩いて実感
歩行距離は4.2km、所要時間は約1時間8分。高低差は120.4m、消費カロリーは282kcal、歩数は約5,438歩。無理なく自然と親しめる心地よいコースです。
山里の風景、花々の香り、地域の温もり――矢倉沢には、訪れた人の心に残る出会いが待っています。ぜひ一度、季節の移ろいと地域の息吹を感じに歩いてみてください。